ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、乳幼児を中心に夏に流行するウイルス性の感染症です。子どもによくみられる夏風邪の一種で、口の中にできる水疱性の発疹(水ぶくれ)が特徴的な症状です。
患者の9割以上を5歳以下の乳幼児が占め、なかでも1歳代で発症することが最も多く、年齢が上がるにつれてかかりにくくなります。
主な症状は、発熱(38~40℃の高熱)から始まります。発熱と同時に、または数時間後に、口の中(多くはのどの奥の、のどちんこの周り)に小さな水ぶくれが多数できます。痛みを伴うため、食事や飲み込みが困難になることがあり、ぐったりしたり機嫌が悪くなったり、食欲不振になる子もいます。その他、頭痛、嘔吐、腹痛などの症状を訴える場合もあります。発熱は数日で治まることが多いですが、口内炎による痛みは数日~1週間程度続く可能性があるため、脱水症状に注意しこまめな水分補給が大切です。
ヘルパンギーナは、主にエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスによって引き起こされる感染症です。原因となるエンテロウイルス属のウイルスは複数あり、感染力も強いため、一度感染して免疫がついても、別のウイルスによって何度もかかってしまうことがあります。
ヘルパンギーナは感染力が強く、保育園や幼稚園等での集団生活による感染や、きょうだいからの家庭内感染も多数見られます。
感染経路は、主にウイルスを含む唾液や鼻汁などによる飛沫感染です。咳やくしゃみによってウイルスが空気中に飛び散り、それを吸い込むことで感染します。
また、ウイルスに汚染された手指や玩具などを介して口や鼻からウイルスが侵入する接触感染や腸で増殖したウイルスが便から排出され、トイレやおむつの後始末の際などに感染してしまう経口感染(糞口感染)もあります。
ヘルパンギーナはウイルス感染症であるため有効な特効薬はなく対症治療が中心となります。
発熱や頭痛、口内炎の痛みを和らげるために解熱剤や鎮痛剤が使用されます。
口の中の痛みで食事や水分が摂りにくい場合には、脱水症状を防ぐために経口補水液などで水分補給を行います。食事は柔らかいもの、冷たいもの、刺激の少ないものを選び、食べやすいように工夫しましょう。
脱水症状が疑われる場合は点滴治療や入院が必要になる場合があるので注意が必要です。
熱が下がって口の痛みがなくなり、元気になれば登園可能です。
ヘルパンギーナにはワクチンや有効な薬はありませんので、「手洗い・うがい」といった感染対策を日頃から生活習慣にすることが大切です。
家庭内での接触感染を防ぐため、タオルや箸、食器などの共有を避け、感染者が触れたものはよく洗い流し、消毒しましょう。
ヘルパンギーナは、発症後、数週間はウイルスが便から排せつされるため、発症した乳幼児のおむつ交換を行う際は、排せつ物の処理に注意し、流水と石けんでしっかりと手洗いをして感染予防に努めてください。